
パート1 コロナ禍、コロナ後の労務トラブルの行方
〇労務トラブルの全体像と項目など
業績悪化などによる、リストラの実施と影響など
- 人員の削減など
- リストラ的な出向・移籍など
- 整理解雇など
- 労働条件の引き下げなど
- 賃金引き下げ
- 賞与、退職金の引き下げ、廃止
働き方改革に関連したトラブルの予測
- 同一労働同一賃金関連
- 厚労省のガイドラインなどが公表
- 7事件、5件の最高裁判断(判例)が出される
- 労基法関係
- 労働時間規制
36条違反と、罰則懲役6か月以下など(119条)
- 有給の付与
39条違反と、罰則懲役6か月以下など(119条)
- 多様な働き方 ※運用ルール等の作成が重要に
- 国の副業の推奨と適切なルール等の重要性
- テレワークの増加と適切なルール等の重要性
未払い賃金のトラブル
- サービス残業の請求
- 時効の3年への延長でトラブル増加か
- 固定時間外手当と大きな2つの課題と対応の必要性
- 未払い賃金対策の予防が重要
- 長時間労働への対応も重要に
ハラスメント
- パワハラ防止の義務化などがトラブル増へ影響か
※2020年6月大企業、2022年4月から全事業所が対象に
- その他のハラスメントの防止義務など
- 事業主の労働環境配慮義務
- 事業主の安全配慮義務
- 部下から上司等へハラスメントも問題に
パート2 同一労働同一賃金をめぐる問題について
●同一労働同一賃金の基本的な考え
同一労働同一賃金とは、「同じ業務や労働時間の場合に同じ賃金を支払え」ということではなく、次の4点について検討して判断すべきとされています。
①職務の内容(同じ職種や内容等を担当しているかなど)
②責任の範囲(部下の指導や会社や顧客等への責任など)
③人事異動とその範囲(部署変更や転勤など)
④その他の事情の有無(正社員転換の有無など) そして、これらを検証し同一である場合に、正規と非正規という雇用形態の違いだけで待遇差があることは「不合理な待遇差の禁止に反する」いう考えといえます。
●国のガイドラインや最高裁の判断
厚労省では、「同一労働同一労働同一賃金に関するガイドライン」の概要(短時間・有期雇用者及び派遣労働者に関する不合理な待遇の差に関する指針)を示し、同一労働同一賃金の実現に向けた基本給や諸手当などに関して基本的な考え方等を示しています。また最高裁は、令和3年1月末現在で、7つの事件について5件の判断をしています。
①ハマキョウレックス事件(2018年6月1日、判断)
②長澤運輸事件(2018年6月1日、判断)、
③メトロコマース事件日本郵便事件(2020年10月13日、判断)
④大阪医科薬科大学事件(2020年10月13日、判断)
⑤日本郵便事件(2020年10月15日、判断) ※3事件分 これらはあくまでも各事件の内容について審議し判断したものであり、各企業としては現状の分析と中長期的かつ総合的に検討したうえで実施することも重要と考えます。
パート3 固定残業代と長時間労働のバランスに注意を
●固定時間外労働の手当を月額に含め、賃金未払いを防ぐ
毎月の賃金を、基本給の他に、手当として固定時間外手当を月30時間分などとして支給する会社が増えています。これは毎月一定の時間外労働が発生する場合に、予め賃金に織り込んで支払うと言う趣旨があります。
特に時間外労働が多い業種においては、固定時間外手当が10万円を超え時間外労働月80時間分を超え、実労働時間も同様になる場合があります。
賃金に関する時効が3年に延長され、確かに賃金未払いの点だけを考えると問題は無いと言えます。
●長時間労働による過重労働にはくれぐれも注意
しかし、毎月80時間を超える時間外労働は、労基法第36条に定める労働時間の上限規制に違反する可能性が生じ、反した場合には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が定められています(労基法119条)。
建設業や自動車の運転業務など、この労働時間規制が猶予されている業種もありますが、労基署の調査で時間外労働月80時間超の長時間労働が判明すれば、削減を命じられることになります。裁判でも、大手飲食店チェーンにおいて恒常的に時間外労働があることから、従業員の固定残業代を月80時間と定めた例があります。しかし、その従業員が亡くなりその遺族が、死亡の原因は長時間労働等による過重労働が原因として提訴し、裁判所は月80時間の固定残業代が長時間労働防止への配慮がないなどとして、会社側に慰謝料などの支払いを命じたことがあります。
固定残業代という未払い防止策と、長時間労働防止のバランスが重要になることに注意が必要です。
パート4 ハラスメントは、部下から上司へも
●パワハラ防止が義務化
2020年(令和2年)4月から、大企業にパワハラ防止義務が法律で規定され、令和3年4月1日には全事業所において適用され、事業主はパワハラ防止の措置をとることが義務となります。
●仕事のミスの注意など、正当場合にパワハラに当たらない
部下が、担当している仕事においてミスを繰り返した場合に、注意を与え改善を求めることはパワハラではありません。感情的な発言などはNGですが、根拠があり、適切な注意や懲戒はハラスメントには当たらないと考えます。
●ハラスメントのトラブルが増加
ハラスメントには、セクハラやパワハラなど50以上もあるとする意見もあります。その中で、自身が「嫌だ、不快だ」と思った第3者からの言動ついて、「ハラスメントだ」と過剰に主張する、ハラスメントハラスメント「ハラハラ」もそれに当たると言われています。(引用:人事のミカタ)
●部下から上司への過ぎた言動もハラスメントの可能性が
上司が部下に業務の指示をすると、「能力のないあなたの指図は受けない」と部下がこれ拒み続け、就業規則の服務規律違反に問われる例もあります。
また、部下が上司に「無能」や「IT音痴」など感情的は言動を繰り替えすことは、ハラスメント行為とも言えると考えます。今後は、ハラスメント禁止事項に、部下から上司等等への行き過ぎた言動の禁止も、就業規則に規定することを検討していいのではと考えます。
パート5 不当解雇などにはくれぐれも注意
●懲戒は、事実と根拠と程度が重要
従業員がルール違反をしたり、会社に迷惑をかけるなどにより、始末書や減給、場合によっては解雇などの懲戒をせざるを得ないことがあります。
懲戒は、@ルール違反などを行ったという事実と、A就業規則や雇用契約書などに懲戒事由が記載されているなどの根拠、Bその行為に適切な懲戒の程度という3つの基本があるといわれ、理由なく重い懲戒を課すなどにより不当と指摘されないように、慎重に行うことが重要と考えます。
●解雇権を濫用と指摘されないように注意が必要
労働契約法(労契法)16条では、「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められています。例えば、口頭で何十回と注意を与えてても改善できない場合に、「もう我慢の限界だ、君はクビだ!」として解雇した場合に、「これまで口頭の注意だけで、いきなり解雇は不当だ。」として撤回を要求されトラブルになることもありますので、注意が必要です。 会社には、従業員の能力向上のために教育や改善が必要な場合に適切に指導して改善させる努力も求められることに留意することが重要となります。
パート6 サービス残業などをめぐるトラブルは10年以上前から
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