本年の労務関係や社会保険の改正について予測(一部)をご紹介させて頂きます。
今年は介護休業関係の改正も
現在の育児休業制度に関する事業主が該当する従業員に対して説明責任を負いますが、本年4月からは介護休業についても同様に制度の周知が義務化されます。
さらに育児に関連して、3歳から小学校入学前までの子を育てる従業員に対して、テレワークや短時間勤務など複数の選択肢を設けることを努力義務とすることや、看護休暇も小学校入学前から小学校3年までの延長なども議論されています。
しかし、選択の内容については飲食店や新聞販売店などテレワークを採用できない事業所も多くあり、さまざまな意見が出されています。
労働条件の説明義務の改正
労働条件通知書や労働契約の締結や更新に際して就業場所や業務の変更が予想される場合は変更内容の記載が義務となり、有期契約者については更新の上限期間(新たに上限を設けたり短縮する場合を含む)も明示が義務となります。さらにこれは努力義務として、無期転換後の労働条件の明示の際に正社員等とのバランスを考慮した事項についての説明も生じるようです。
社会保険の加入拡大
今年10月から短時間労働者(週20時間以上のパート等)に対する社会保険の適用が拡大され、被保険者数51人以上の企業等が加入義務となります。
現在、従業員50人以上の事業所では産業医や衛生管理者の選任など、労働安全衛生法上の多くの義務があり、企業等においては従業員50人がキーワードになりそうです。
フリーランスへの労災適用拡大と外注化
今年11月頃には、フリーランスへの労災適用範囲が決定されることになっており、全てのフリーランスが対象となる可能性があります。
既に雇用からフリーランスへの外注化が急増しており、中には偽装外注と思われる例もあり、フリーランスへの労災適用拡大はフリーランス化の解禁ではないことの理解と正しい対応が必要です。
副業をする従業員の健康に留意
副業を認めている企業などでは、副業を行う自社の従業員の長時間労働の防止など健康状態を把握する義務があります。副業の状況やその影響を確認し、把握したうえで適切な対応が重要になります。
労務トラブルの予測(24年問題の影響など)
昨年の最低賃金の大幅アップや一昨年からの賃金時効の3年間への延期などに加え、4月から建設業、運送業、医療の時間外労働の上限に関する猶予無くなる「24年問題」の影響による未払い賃金問題などが懸念されます。
さらに、パワハラやセクハラなどのハラスメントに関するトラブルの急増が予想されており、注意が必要と考えます。
労基署の調査が活発に
本年4月から労働時間の上限に関する猶予が廃止され、労基署の調査が行いやすくなったと言われています。
そのため、猶予が廃止される建設や運輸などに限らず、今後は全ての事業に関して労基署による積極的な調査が実施されることが考えられ、業種に関係なく対応が重要になると考えます。